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きーぷあうと |
「こんな所で、いつもお弁当を食べているの?」 野次馬だらけの教室から連れ出してくれた志摩子さんに案内されたのは、校舎裏の一角。人気はまったくなくて、あたりはシンと静まりかえっている。 「季節限定よ。春と秋のお天気のいい日」 「夏は?」 「この桜の木に、毛虫がわくからちょっといやね。でも…」 お弁当を広げる手を止めて、志摩子さんは、なぜか一本だけある銀杏の木を見上げた。 「あと少ししたら、ギンナンがたくさん落ちてくるから、それは楽しみ」 そう言って、志摩子さんはうっとりと笑った。
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それがあんまり嬉しそうなので、祐巳もつられて笑った。 「変わっているね、志摩子さん」 「そう?でもギンナンって、踏んでぐちゃぐちゃにならなければ、それほど匂わないわよ」 「志摩子さん、もしかしてその潰れてないギンナン、持って帰る?」 「当たり」 「やっぱり、志摩子さんって面白い」 二人は、顔を見合わせてふふ、と笑った。 風が、半ば色づいている葉をたたえた梢を揺らした。
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「…祐巳さんは、どうしてスールにはなれないっておっしゃったの?」 「………」 「…そろそろ、行きましょうか」 祐巳が思い詰めたように無言でいると、志摩子さんは立ち上がって言った。 「ギンナンを踏まないようにね」 「ふふっ。…うん」 もしかしたら、気を遣ってくれたのかな。祐巳は笑って志摩子さんを見上げた。
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「くれぐれも、踏まないようにね?」 「う、うん…」 にっこり笑顔のままなのだが、志摩子さんは異様な迫力を背負っている。 祐巳は、こくこく頷いた。 「(し、志摩子さん、拾う気満々だ…)」
そして、祐巳は悟った。 ここは志摩子さんのテリトリー。狩猟場であることを。
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同ネタ多数の予感(笑)。 |
2004.01.16 |