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あい・こんたくと |
「それではみなさんに、新しいお友達を紹介しまーす!」
ダンス部の視線が一気に集中しているというのに、一向に気にした風もなく、むしろ嬉々としながら、白薔薇さまは祐巳の肩を叩いた。 「福沢祐巳ちゃんです。今日から群舞に参加しますから、仲良くしてあげてください」 「ええっ、あ、あの…」 戸惑う祐巳に、にひっと笑うと、白薔薇さまは祐巳をポンと突き出した。 あわぁっとか妙な声を上げつつ、たたらを踏む祐巳。 一斉に、視線とざわめきが制服姿の祐巳に集中する。
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それはなんというか、餌を待つ獣の前に突き出されたイケニエの心境。とても気まずい。 所在なげにうつむく祐巳を見かねたのは、後方で椅子に腰掛けていた由乃さん。 咄嗟に、お姉さまである令さまを見た。 (お願い、令ちゃん) はたと視線を受け止めた令さまは、こくりと頷いた。 (分かったよ、由乃) 「じゃ、私が」
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驚く祐巳の手を取って、令さまは中央へ。やがて、音楽とともにダンスが始まった。
「…よそ見しない。祥子のことが、気になるみたいね」 「いえ、そんな…ただ、私とはあまりにも違うから…」 えっ?と首を傾げた令さまの手を、突然、祐巳は振り解いた。 「あのっ!…わ、わたし忘れ物をしたので…失礼しますっ」 「あっ、祐巳ちゃん!」 止める間もなく、祐巳は駆け出していた。 その時、伸ばしかけた令さまの腕の先に、由乃さんの視線があった。
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びくぅっ! (ちょっと…なに、やってるの令ちゃん) (えっ、いや、私にも何がなんだか…) (お願いって言ったじゃないの。それなのに…!) (ええっ、私は別に何も…) (聞く耳持たないっ、後でオシオキよ!) (よ、由乃ぉ〜)
「…凄いね。あの二人、目で会話してる」 仲いいなぁ…と笑う白薔薇さまに、祥子さまは首を傾げた。 「でも、令がなぜだか汗びっしょりなのですけれど…?」
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せっかくいいシーンなのに(笑)。 |
2004.02.04 |