知りすぎ |
「うらぎりものぉ」 本を探してくれた上級生と別れた直後、背後からうらめしそうな声がした。 「由乃さん」 振り返ると、こわい顔をつくった由乃さんが立っていた。 「いつの間に、敵方と仲良しになったの」 「敵…?」 「私たちの敵と言ったら、ロサ・カニーナでしょう」 「ええ…だから私は、ロサ・カニーナのことを調べようと思って…」
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すると、何を寝ぼけたこと言ってるの、といった感じで由乃さんが声を高くした。 「さっきのあの方が、ロサ・カニーナよ」 「あの人が…?」 祐巳はびっくり眼で振り返るが、もうそこには先ほどの上級生の姿はない。 「もう調べはついてるの…」 そう言うと、由乃さんはスカートの襞の部分にあるポケットから手帳を取り出した。
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「2年藤組、蟹名静さま」 由乃さんが手帳のページを繰る。 「出席番号10番。図書委員。中学時代から合唱部で、去年の学園祭ではアリアを独唱している、リリアンの歌姫」 へぇ〜、と祐巳は素直に感心した。由乃さんたら、いつの間に調べたんだろう。 「蟹名という文字をもじって、クラスメイトからは『ロサ・カニーナ』と呼ばれているんですって」 由乃さんは、さらにページを繰った。
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「1年生の時から今の白薔薇さまに憧れて、真似をして髪を伸ばしたりしてたんだけど、さっぱり気付いてもらえず。中学卒業から先延ばしし続けてきたイタリア留学を前に、白薔薇さまに猛アピールすべく、最後の賭けに出たってわけね!」 ガターン! 受付の辺りで、誰かがひっくりこけるもの凄い音がした。 「ちなみにスリーサイズは上から…」 「ちょ、ちょっと待った待った!」 あわてて、ロサ・カニーナご本人が止めに来た。
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私立探偵・由乃。これで令ちゃんのチェックもバッチリよ(にこり)。 |
2004.02.13 |