白鳥は水面下で足掻く |
「これ…何かのパフォーマンス?」 一面に散らばったチョコを見て、私は目をしばたたかせた。 「はっ、はい。び…びっくりチョコレートっていいます。 口が曲がるほどマズイ味のハズレが混じっていて…それで、びっくり」 ふふ…バカね、祐巳ったら。 咄嗟に口から出任せなんて言って…あら? 「…ここにもあるわ」 花瓶の陰に落ちていた1つを拾って、口に入れた。
|
(!?)
|
落ち着くの。 落ち着くのよ、小笠原祥子。 ここで顔に出しては、祐巳を傷つけることになる…! 全神経を集中するの! 顔の筋肉は引きつらせないように。毛穴からは汗を噴き出させないようにするのが、この場でのたしなみ! 咀嚼するの!そして嚥下するのよ! ごくっ。 「……おいしいわ」 にっこり。
|
「よかった。じゃあ、それは当たりです」 ああ…祐巳がホッと笑っているわ。よかった…。 ……だけど祐巳ったら、一体なんていうチョコを作るのかしら。これはまるで殺人級。マズイって言っても、モノには限度というものがあってよ? ああ…なんだか意識が朦朧としてきたわ。ここは何とか気を紛らわせなければ…。 「当たりだと、何かいいことがあるのかしら」 「はい…、〜…、〜…、〜…」 ああ…ダメ、祐巳が何か言っているけど、全然耳に入ってこない。と、とにかく相槌を打っておかなくては…。
こうして、祐巳は祥子さまとのデートを勝ち取ったのであった。
|
試食した祐麒の反応を見るに、内心、こんな戦いがあったに違いない(笑)。 |
2004.02.27 |