タイ(黄薔薇編)


「祐巳、タイが曲がっていてよ」

「あ、お姉さま…ありがとうございます」

 

「(祥子も毎度毎度、よくやるわね)」

お馴染みとなった光景をぼーっと見ながら、黄薔薇さまは考えた。

「………」

 


「令……ちょっとお待ちなさい」

偶然、通りかかった妹を呼び止める。

「あ、お姉さま。ごきげんよ…」

「タイが曲がっているわよ」

そう言って、黄薔薇さまは令の胸元に無造作に手をかけた。

「お、お姉さま…?!」

 


黄薔薇さまの手によって、令のタイは一分の隙もなく結び直される。

さすがは、マスター・オブ・タイ結び。

「あ、ありがとうございます」

珍しく顔を赤らめて動揺する黄薔薇のつぼみと、気だるげな表情の黄薔薇さまのツーショットに、遠巻きに見ていた女生徒たちから、黄色い声が上がった。

 


「(これは、以外と面白いわ)」

照れる令の横で、その腕にしがみついて、「これは、わたしのっ」と自己主張しながら、威嚇のうなり声を上げる由乃を見て、黄薔薇さまは思った。

「ふふっ…ごきげんよう」

 

面白いことの為なら、危険も省みない。

2003.04.18

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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