タイ(紅薔薇編)


紅薔薇さまは思った。

「最近、スキンシップが足りないわ」

祥子に祐巳ちゃんという妹ができて、それはとても良いことなのだが、その反面、祥子と接する機会がめっきり減った気がする。

「やっぱり、お祖母ちゃんだって、娘がかわいいものよ」

というわけで、紅薔薇さまは立ち上がった。

 


「お待ちなさい、祥子」

「お姉さま…ごきげんよう」

「祥子…タイが曲がっていてよ」

「…そんなはずはありませんわ。先ほど、お手洗いで直したばかりですもの」

さすがは自分の妹。一分の隙もない笑顔。

一筋縄ではいかない。

 


しかし、そんなことで紅薔薇さまはひるまない。

「甘いわね、祥子。タイの角度が右に1.5度、両端の長さが3ミリは違っていてよ」

「!!」

だてに長いこと、江利子のパーフェクト・タイ結びを観察してきてはいない。

祥子の顔に、明らかに動揺が走った。

「大方、祐巳ちゃんのことでも考えながら結んでいたでしょう」

しかし、次のセリフはお姉さまといえど、聞き捨てならないものだった。

 


「憶測でものをおっしゃるのはやめてください、お姉さま。私がいつ、祐巳に気を取られたというのですか」

「あら、私は『祐巳ちゃんのことを考えていた』って言っただけよ?それとも、気もそぞろになるほど、祐巳ちゃんを想っていたのかしら?」

「…っそんなことはありませんわ!」

「フフフ…本当かしら」

むきになって突っかかる妹に、紅薔薇さまは本来の目的も忘れて、祥子いじめを楽しんだ。

 

実はこれが紅薔薇さまのスキンシップなのかも。

2003.04.19

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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