乃梨子=仏像。


「志摩子さ…っといけない、お姉さま!」

二人のいつもの指定席。

銀杏の中の一本の桜の木の下。

ふわふわとした巻き毛の白薔薇さまは、けぶるような笑みを浮かべて妹を迎えた。

「今は二人だから、志摩子でいいわ」

乃梨子は、はいっと顔を輝かせると、白薔薇さまのもとに駆け寄った。

 


「ね、志摩子さん。

今度の日曜日、『呪怨』を見に行かない?」

ちょうど今、かかってるんですよ。

と嬉しそうに言う乃梨子に、白薔薇さまはにっこり微笑んだあとで、小首をかしげた。

「ええ、いいわよ。…でも、『ジュオン』って、聞いたことのない仏像ね。響きからして、観音像かしら」

 


………。

………。

「あの…志摩子さん? 『呪怨』って、映画の名前なんだけど」

すると、白薔薇さまは、びっくりしたように大きく目をみはった。

「まあ…そうなの?」

 


志摩子さん。

私と言ったら、仏像しかないんですか。

「そうだけど?」とにっこり微笑まれそうで、とても聞けない。

 

恐いらしいですね。「呪怨」。

2003.04.22

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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