もしも祥子さまの寝起きが良かったら |
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「う…ん」 祥子さまは寝返りをうった。いけない。きれいだからってずっと見ていたら、変態さんの仲間入りをしてしまう。 ………。 だが待てよ。 ここは避暑地の別荘。階下の源さんとキヨさんは、上がってくることはまずない。 祐巳は何故か、キョロキョロと周囲を見回した。 室内には眠れる祥子さまと自分以外には誰もいない。 視線を戻すと、祥子さまは可憐なピンク色の唇から、静かな寝息を漏らしている。 ………。
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いやいやいや。 何も唇に行こうっていうんじゃない。聖さまじゃあるまいし。 でも、ほっぺくらいなら…。 「スキンシップ」という言葉が、何故か頭に浮かんだ。 悪魔の羽と尻尾を生やした聖さまが、頭の中で「やっちゃえ、やっちゃえー」と誘惑する。 そうだ。自分とお姉さまはあねといもうと。スキンシップの一つや二つ、良いではないか(←都合の良い解釈) ふわりと、祥子さまの髪からシャンプーの香りがした。 祐巳は、引き寄せられるように、顔を近づけて…。 どきどきどき。 どきどきどきどき…。
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ばちっ。 「うっひぃゃうっ!!」 突然、目を開けた祥子さまと至近距離で目が合ってしまい、祐巳は訳の分からない奇声を上げた。 「祐巳?……もう朝なのね。おはよう」 「おっ、おっ、おっ、おはっ、おはおは…」 祐巳の口から出たのは、言語を忘れた原住民のような声だけ。 上体を起こして小さく伸びをした祥子さまは、目を瞬かせて祐巳を見た。
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「どうしたの、真っ赤な顔をして。熱でもあるのかしら…」 艶のある前髪をかき上げて、祥子さまは顔を近づけた。 こつん。 「!!!」 ぼっしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。 祐巳は脳天から煙を噴いて、くたっと伸びた。 「ゆ、祐巳?!どうしたの、祐巳!! …キヨ、ちょっと来てちょうだい、キヨ!」 祥子さまの腕の中で、かっくんかっくん揺すられながら、なぜか祐巳は幸せそうに鼻血を一筋流していた。
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長いわ(^^;)。 |
2003.04.28 |