千代古齢糖・白
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「あっ、どうして」 「すごくおいしいケーキを食べた後、こんなチョコレート食べたら口が曲がっちゃいますから」 せっかくもらったチョコレートの箱を取り上げられて、白薔薇さまは恨めしそうな顔をした。 志摩子に「よかったね」と声をかけて、階段をリズミカルに上がっていく祐巳を見送って、白薔薇さまはぽりぽりと頭をかいた。 「なんだろね、ありゃ」 さっぱりわからない、という顔で、志摩子に同意を求めると、彼女は真っ赤な顔をしてうつむいたままだ。
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ふーん? 首を傾げると、口をむぐむぐと動かす。 食べたのはだいぶ前だが、かすかに残るマーブルケーキの味。 ん?
思わせぶりな祐巳ちゃんの視線。 うつむいたままの志摩子。 マーブルケーキ。
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「あ、そっか」 「………」 ぽん、と手を打つ白薔薇さまに、志摩子はさらに赤面して、口元に当てた手をもじもじと動かした。 「えーと、どこやったっけかな」 何かを思いついたように、白薔薇さまはごそごそと制服のポケットを探る。 「あったあった。 志摩子」 「は、はい」 「手、出して」
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おずおずと差し出された手の上に、銀紙に包まれた一口サイズのチョコが置かれる。 「これ…」 「お返し」 ニカッと笑う白薔薇さまを見て、志摩子はくすくすと笑った。 「お姉さま…これ、わたしが先ほどお渡しした参加賞」 「あれ、そだっけ」 白薔薇の姉妹は、顔を見合わせると、ひとしきり笑い合った。 「マーブルケーキ、おいしかったよ」 なでなでと、髪ごしにお姉さまの手の温かさを感じる。 その言葉だけで、志摩子は幸せだった。
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たまには、こんなのも。 |
2003.04.30 |