ガツン!「ぅぐ…」バタッ「あ、あなたさまは…」 |
「瞳子ちゃん」 「はい、祥子お姉さまっ」 憧れの紅薔薇さま、小笠原祥子さまに名を呼ばれて、瞳子はとっておきの笑顔で応じる。 「私が不在の間、山百合会のお手伝いをしてくれていたんですってね。 ありがとう、お礼を言うわ」 「いいえ、そんなっ。…瞳子、祥子お姉さまのお役に立てましたか?」 少しだけ上目遣いがポイント。 すると、祥子お姉さまは、にっこりと、マリア様のような笑みを浮かべた。 「ええ、もちろんよ」 至福。 瞳子の気持ちはどこまでも舞い上がる。
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「………」 「………」 「………?」 にこにこと笑みを浮かべていると、不自然な沈黙が流れた。 気が付くと、祥子お姉さまが、じっと見つめている。 「あの…祥子お姉さま?」 少しだけどきどきしながら訪ねると、祥子お姉さまは、はっと気が付いたように首を軽く振って、いいえごめんなさいと言った。 さらさらの黒髪が、ふわりと動く。
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「…あのね、瞳子ちゃん」 祥子お姉さまの真剣な眼差し。 「は、はいっ」 どきどきどき…。 鼓動が早くなった。 「…いえ、やっぱりやめておきましょう」 「っなんですの、おっしゃって!」 じれたように、瞳子は両手を胸の前で組んだ。瞳を潤ませて、にじり寄る。 祥子お姉さまは、まだ逡巡していたが、やがて意を決したように口を開いた。
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「…その髪型、中に針金を入れて補強しているって、本当?」 「祐巳さまですね?祐巳さまなんですねっ?!」 返事も待たず、瞳子はどぎゅーーーん!と駆け出した。
今回は、祐巳が一枚上手だったようだ。
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この辺でやめときます(笑)。 |
2003.05.07 |