蔦子さんに会いたい

 

 それはある日の薔薇の館でのこと。
 
「祐巳」
「はいっ、お姉さまっ」
 
 紅薔薇のつぼみこと福沢祐巳さんが尻尾をふんふん振る様子は、紅薔薇さまこと小笠原祥子さまにとって時間を忘れそうになるほど眼福のひとときなのであるが、いつまでも見ていても話が進まないので断腸の思いで用件を切り出す。
 
「あなたのお友達に、武嶋蔦子さんに尋ねたいことがあるの」

 

 

「はい、では明日の放課後に薔薇の館へ来てもらうように」
「いえ、悪いけど今すぐに時間を貰えないか確認して欲しいの」
「今すぐですか……」
 
 昼間聞いたところでは確か、暇だから校内のパトロール(と言う名のネタ探し)をするつもりだとか。
 まだ帰宅していない可能性は高い。
 しかし祐巳さんには、蔦子さんの行きそうな場所と言っても写真部の部室くらいしか思いつかなかった。
 普通に探しては見つからないかもしれない。
 
「あ、そうだお姉さま、ちょっと外へ出て頂いてもよろしいですか?」

 

 

 祥子さまを引き連れて薔薇の館を出た祐巳さんは、見通しの良い道の真ん中に立つと、キョロキョロと周囲の様子をうかがっている。
 
「何をしているの?」
「お姉さま、ちょっと待っててくださいね」
 
 そして怪訝そうな祥子さまの前でロザリオを外す祐巳さん。
 
「お姉さま……これを」

 

 

「ゆっ、祐巳っ? あなた、何をっ」
 
 差し出されたロザリオを見て蒼白になる祥子さま。
 混乱し、受け取りたくないばかりにそれを祐巳さんへぐいと押し戻してしまう。
 その瞬間パシャ、と近くの木の陰からシャッター音が。
 
「蔦子さん見つけたっ!」
「…あれ? 釣られちゃった?」
 
 改めて蔦子さんの事件感知力は凄いと思う祐巳さんだった。

 

祥子「心臓に悪いから二度としないで頂戴…」

2003.05.14

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

お名前  mail

  ご意見・ご感想などありましたらどうぞ。