蔦子さんに聞きたい
「いや、祐巳さんに限って絶対にありえないとは思ったけどね」 屈託無い微笑を浮かべる蔦子さんは薔薇の館に招き入れられてもカメラを手放さない。 「でも祐巳さん、いくら私を呼びつけたいからって、あれは感心できないな。 もし私じゃなくて新聞部に見つかってたらどうするつもりだったのかしら?」 「あう……」 もちろん祐巳さんは全然そんな事考えていなかった。
「それで紅薔薇さま、この私に御用とは?」 「あなたの写真の腕を見込んでお願いしたいのだけれど、私にカメラの使い方を教えてくださらない?」 祥子さまの言葉にピクリ、と蔦子さんの眉が反応した。 「……それは紅薔薇さまとして、ですか?」 「いいえ、リリアンの一生徒、小笠原祥子としてお願いするわ」 「なるほど……お引き受けしましょう」 フ、と全てを見透かした笑みを浮かべる蔦子さん。
「よかったわね祐巳さん」 「えっ? な、何が?」 「後でわかるわよ。 では今は山百合会の役職は忘れて、小笠原祥子さま、まずはカメラの基本構造についてご説明しましょう」 「祐巳、あなたも一緒に聞いていらっしゃい」 「は、はい」 狐につままれたまま、蔦子さんの講義は部品の名称から初歩的なアングルの取り方まで、実に40分に渡って行われた。
「……あのー、お姉さま、さっき蔦子さんが言ってたことって」 「祐巳、土曜日は暇があるかしら?」 はっと祥子さまの言葉の意味に気付いて、思いっきり頷く祐巳さん。 暇じゃなくたって暇ですとも。 「それはよかったわ。初めての撮影が風景写真では味気ないものね」 「えっ、わ、私ですかっ!?」 「当然でしょう、あなたは私の妹なんだから」
2003.05.14