雨のち、ドピーカン |
雨は、苦手。
一度は無くした、ブルーの傘を思い出すから。
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昇降口にたたずみ、憂いの漂う顔で、降りしきる夏の終わりの雨を見上げる。 分厚い雲に覆われた空から、大粒の雨が勢い良く落ちてくる。 六月に打たれた、あの冷たい雨とは随分違う。 でも―――。
雨は、苦手。 ずぶ濡れになって泣いた、あの時のことを思い出すから…。
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「祐巳?」 声にハッと振り向くと、赤い傘を広げかけた祥子さまが立っていた。 「お姉さま!」 「もしかして、傘を忘れたの?」 バカね、今日は降ると分かっていたでしょう。 苦笑しながら、祥子さまは先に立って傘を広げた。 「ほら、お入りなさい」 「は、はいっ!」
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お姉さまと相合い傘。 お姉さまと相合い傘! 雨最高。雨大好き!(ぐっ)
しっぽを振りながら、祐巳は祥子さまの側に擦り寄った。
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カバンの中に折り畳み傘が入っていてもお構いなし。 |
2003.05.17 |