大物の姉

 

リリアンの休み時間。

祐巳は、教室の窓からぼんやり校庭を見ていた。

「おぜうさん。あなた、背中がすすけていてよ」

わけのわからない呼びかけに振り向くと、案の定、クラスメートの武嶋蔦子さんと山口真美さんが立っていた。

「どうしたの、祐巳さん。昼間からたそがれちゃって」

言いつつ、パチリと一枚。

 

 

「ううん、別に大したことじゃないの」

祐巳は、あはは…と笑って手を振った。

「紅薔薇のつぼみの『大したことない』こと、気になりません、真美さん?」

今日もきっちりの七三がまぶしい真美さんは、目を光らせながら、うんうん頷く。

「だから、本当になんでもないんだってば。…ちょっと、妹ってどんな感じかなって考えていたの」

拍子抜けしたように、蔦子さんは構えていたカメラを下ろした。

 

 

「妹ねぇ。私には分からないな、残念ながら」

そう言う蔦子さんは、姉妹を持たないのがポリシーの人だ。

「真美さんは?」

「うーん、私も今のところは。新聞部に入ってきた一年生、めぼしい子がいないのよ」

妹選定基準は、あくまで部活動が中心のようだ。真美さんらしい。

「ふーん…そっか。 あ。

視線を校庭に戻した祐巳さんは、そこに見知った縦ロールを発見。

 

 

「おーい、瞳子ちゃん」

突然、名前を呼ばれた瞳子ちゃんはぎょっとして周囲を見回していたが、祐巳の姿をみとめて、すざっと後ずさった。

「やっほー」

祐巳は手をブンブンと振っている。

なんだなんだと、周囲に集まる野次馬にいたたまれなくなったのか、瞳子ちゃんは回れ右をすると、耳まで真っ赤にしながら、すたすたすたすた!と凄い早さで歩き去った。

 

「祐巳さんの妹になる子って、結構大変そうね」

「うん」

したり顔で、蔦子さんと真美さんは頷き合った。

 

瞳子ちゃんなんて、なってもいないのに苦労してますが(笑)。

2003.05.18

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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