薔薇さまにあ |
「薔薇さま方」 卒業式が終わり、紅・白・黄の薔薇ファミリー勢揃い。 まるで夢のような光景に見入っていた三奈子は、その終わりが近づいたことに気付いて、あわてて進み出た。 「あの、いろいろとご迷惑かけてすみませんでした」 頬が熱くなっているのを感じながら、自然と頭が下がる。 「でも、薔薇さまたちと同時期に高等部ですごせて、私すごく幸せでした」 だから…。
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言い募ろうとした瞬間、ぽろりと零れた。 三薔薇さまのいぶかしげな表情が、見る間に滲んでいく。 「あらっ? えっ? 私ったら何?」 ボロボロと滴の伝う頬に手をやって、ようやく自分がみっともなく泣いていることに気付いた。 驚きより恥ずかしさの方が勝って、知らずに足が回れ右する。
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「やだ、ごめんなさいっ」
ばたばたばた…とカラーとポニーテールのしっぽを弾ませながら、三奈子は走り去った。 なんてみっともないお別れなんだろう。 薔薇さま方がどんな顔をしてあきれているか想像すると、とても振り返れなかった。
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「はあっ…」 自分の部屋の机に突っ伏しながら、三奈子は大仰なため息をついた。 机の上は、書きかけの原稿やら写真やらが散乱している。 そのうちの幾枚かを取り上げる。 そして、またため息。 そこには、取材資料と称して武嶋蔦子さんに撮らせまくった、三薔薇さまのお姿が写っていた。 「言えなかったな…一緒に写真をお願いしますって」
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実は誰よりもコアな薔薇さまファン。 |
2003.05.18 |