かんさつ |
見上げると、梢の間から柔らかい日差しが降り注いでくる。 夏の苛烈な暑さは和らいで、時折吹いてくる風に身を任せると、初秋の爽やかさも、わずかながら感じ取れる。
|
志摩子は静かに目を閉じて、もう一度開いた。 木々の葉はまだ青く、緑をなした梢が風に揺れている。 その間からのぞく青い空とのコントラストをしばらく楽しむ。 葉によって遮られた日光が、体や地面にまだらの模様を落とす。 志摩子は小さな微笑みを浮かべた。
|
どん! 「きゃっ」 「あ、ご、ごめんなさい?」 上を向いてゆっくり歩いていた志摩子は、だれかと軽くぶつかってしまう。 視線を地上に戻すと、乃梨子がびっくりしたように、大きな瞳を見開いていた。 「あら、乃梨子。ごめんなさいね」
|
乃梨子は、おかっぱ頭をふるふると振った。 「2、3度呼んだんだけど。気付かなかったの?」 「ごめんなさい。ちょっと下見に熱中しちゃって…」 志摩子さんは、うふふと笑った。 「??」 下見って…何を?と乃梨子は首を傾げた。
|
ギンナンの出来具合を。 |
2003.05.20 |