かりものきょうそう |
『借り物競走』。 それは、汗と涙とため息と笑いでできている。
ついに、祐巳の番がやってきた。 ピストルの音とともにダッシュ。六人の選手は、ほぼ同時に封筒を掴んだ。 どうか簡単な品物でありますように。祈りながら、封筒の中に指を突っ込み紙をもどかしく取り出す。 二つ折りになっている紙を開くと、そこに書かれていた文字は。
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【 ドリル。 】
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………。
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「納得いきません!!」 1着の旗の下で、体操服姿の瞳子ちゃんは、はげしく頭を振った。 トレードマーク…というか、アイデンティティそのものの特徴的なお下げが、ぶるるんぶるるんと揺れる。 「なぜ私なんですか、祐巳さまっ?!」 「いや、見た瞬間、瞳子ちゃんしかいないと思って」 「私のどこがドリルなんですか!」 「この辺。」 祐巳は一瞬の迷いもなく、瞳子ちゃんの頭の両側で揺れるお下げを指さした。 「これはドリルじゃありません!ええ断じて違います!」 「いや、でも審判からオッケー出たし。」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 「いや〜、良かった。瞳子ちゃんのおかげで1位だよ。ありがとね」 「ドリルじゃないんですってばっ!!!」
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いや、ドリルだし(笑)。 |
2003.11.01 |