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お忍び蓉子さま |
それまで、おろおろしながらも、どこか楽しそうに飛来する玉を避けていた志摩子の顔が引きつった。 「志摩子さん、覚悟!!」 「っ!?」 凄い形相で突撃してくる由乃さんに、ひぃっと声にならない悲鳴を上げて、志摩子は背を向けてあたふたと逃げ出した。 た、たすけて乃梨子っ。 すたこらすたこら。 「まてーっ」 ずどどどどどどっ…
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「あっはっはっは!」 生徒や父兄達の人垣の外。 滅多に見れない妹の姿に、前白薔薇さまこと佐藤聖は、膝をばしばし叩いて、涙を流しながら笑い転げていた。 「由乃ちゃん最高。だいぶ、地がでてきたなー」 笑いの余韻を引きずりながら、聖は志摩子の姿を目で追った。 そして、今度は優しく笑う。 「うまくやってるじゃない、志摩子」
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『フレー、フレー、み・ど・り!』 どどん、どんという太鼓の音と共に、正統派の声援が聞こえる。 目を転じると、学ランを着た緑組応援団の前列で、祥子が三三七拍子の音頭を取っていた。 えらく力の入った応援だなぁ…と視線の先を追うと。 「祐巳ちゃん、か。…姉バカなんだから、まったく」 他の三割り増しくらいの勢いで声を張り上げる祥子に、感嘆と少しのあきれを覚える。 「フフフフ…」 …ん? どこからか聞こえる、聞き覚えのある低い笑い声に目をやってみれば。
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「男嫌いのあなたが男装…しかも学ランだなんて。成長したわね、祥子…フフフフ」 妹の学ラン応援団姿に、物陰で感動に打ち震えているサングラスをかけた謎の黒髪の人物の姿が。 「………」
とりあえず、聖は思った。 この似たもの姉妹め。
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ああっ、蓉子さまが怪しい人に(^^;)。 |
2003.11.06 |