@
第一種遭遇 |
パン、パン!
ああ、負けた…。 視線の先で、緑チームがあっという間に紫チームに引きずられて、綱引きの勝負はついた。 もう、またあの方ときたら…。 負けたというのに、クラスメイトと一緒にへらへらと笑っている。 「まったく。祐巳さまは、ご自分の置かれた状況がわかっているのかしら…」
|
ふう。 …とため息をついて、瞳子ははっと我に返った。 「別に、勝とうが負けようが私には関係ありません」 別に誰に訊かれたわけでもないが、言い訳のように呟く。 次は「棒引き」だ。そろそろ集合場所へ行かなくては… ドン! 「きゃっ」 「あっ、ごめんなさい」 可愛らしく尻餅をついた瞳子に、手が差し伸べられる。 「ごめんなさいね、けがはなくて?」 落ち着いた、深みのある声。 少しぼんやりしていると、その手はあっという間に瞳子を引っ張り上げた。 温かい手だった。
|
「いえ、私も少しよそ見をしていたので…」 「砂がついてしまったわね」 親切にも、背中の方についた砂を払ってもらい、あわてて恐縮する。 「あっ、平気ですので……………」 と、相手の顔を確認した瞳子の視線が、ある一点に止まった。 じー…………。 「?」
サングラス…? すっきりとした、落ち着いた色のワンピースに、まったく似合っていない。 「あ゛っ、こ、これは…」 瞳子の視線に気付いたのか、目の前の女性はあわてたように手を振った。
|
「ほほほほ。…実は強い太陽の光が苦手なの」 「はあ…」 「本当よ。別に全然怪しい者じゃないから。」 と言いつつ、思いっきり挙動不審なその女性は後ずさった。 「あ、急用を思い出したからこれで…本当にごめんなさいね。ほほほほ…」 お上品な笑い声が、ドップラー効果で遠ざかっていく。
「どなたかしら…」 変わった方だ。 …でも、なんとなく初めて会った気がしない瞳子だった。
|
オチは次回で(^_^;)。 |
2003.11.07 |