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祐巳さまと呼ばないで |
「お姉さま!」 「あら、どうしたの乃梨子…汗びっしょりよ?」 「いえ、ちょっと走ってきたもので…」 「ふふ…ほら、これお使いなさいな」 「だ、だめ!こんな真っ白なハンカチ…汚れてしまう」 「いいから。ね?」 「…はい。ありがとうございます、お姉さま」
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ぼー……っ。 (『お姉さま』…かぁ) 今日も仲睦まじい白薔薇姉妹をテーブルの端から眺めながら、祐巳は物思いに耽っていた。 「…なに、ぬぼーっとなさってるんです、祐巳さま」 煎れたてのミルクティーのカップを祐巳の前に置いて、辛辣な言葉を投げつけたのは、言わずと知れた縦ロール。一年椿組、松平瞳子ちゃん。 祐巳は特に怒るでもなく、ぼんやりと瞳子ちゃんを見上げて、ため息をついた。
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「ねえ、瞳子ちゃん…」 「はい?」 「お姉さまって呼んでみてくれない?(他意なし)」 「………」 「………」 「……はあっ?!」 「だから、お姉さまって呼んで」 「どどどど、一体どうしてですかっ?!」 何を想像したのか、狼狽する瞳子ちゃんの顔は真っ赤。 「呼んでほしいの」
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「そっ、そんないきなり…だ、だめです!」 「呼んで」 「いっ、いやですわ」 「呼んでったらぁ!」 「ちっ、近寄らないでくださいっ」 「呼んでくれないと、こちょこちょしちゃうから!」 「ぎゃーーーっっ!!」 ごめすっ。 瞳子ちゃんの逃げ去ったビスケット扉を見つめて、頭に大コブをつくった祐巳は、拳を握りしめた。 「こうなったら、絶対、『お姉さま』と呼ばせてみせるわ、瞳子ちゃん!」 ガチャーン! あ。 流し台で、細川可南子ちゃんがコップを取り落としてわなわなしてる。 |
祐巳さん、それは「姉妹宣言」になるのでは?(^^; |
2004.02.06 |