白薔薇来訪 |
「祐〜巳ちゃんっ」 だきっ。 「ひぎゃぅっ!」 「おお、いい声♪」 「白薔薇さまっ、お戯れが過ぎましてよ!」 「いいじゃん、いいじゃん」
それはまさしく、過去何度となく繰り返されたいつもの風景。 パラリ。 法学系の参考書なんかをめくりながら、私はふとデ・ジャ・ブに襲われた。
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ここは薔薇の館。 卒業後まもない春休み。本当に偶然に、4人が集まった。 一瞬、私だけ真面目に何やってるのかしら、と不条理な自己嫌悪に苛まれる。 「いい加減になさってください!」 目の覚めるような祥子のヒステリックな声が、頭にキーンと来た。 「うわー、祥子が怖いよ。タスケテ蓉子〜」 おどけながら、聖が抱きついてくる。 「ちょっと。おふざけが過ぎるわよ、聖」 注意しつつ、私は内心どきどきしていた。
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その時、ビスケット扉が静かに開いた。 「あら、そこで大口開けて笑ってるのは誰かしら。私の覚えている人と、随分違うようだけれど」 口元に手を当てて、含み笑いをするその人物は…。 「お……お姉さ、ま?」 声を上げたのは、誰あろう聖。 「白薔薇さま? お姉さまって…」 不思議なものを見たように、祐巳ちゃんが目をぱちくりさせる。 「あ、あの方は…」 祥子が目を瞠った。
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「元気でいて? 聖」 あの頃とお変わりない優しい顔で、その方はほほえんだ。 「…本当に、お姉さまなの」 聖のこんな顔を見るのは、久しぶり。私や祐巳ちゃんたちが側にいるのも、忘れてしまったみたい。 「そうよ? どうしたの、ヘンな顔して」 「どうせ…私はバタ臭い顔です…」 憎まれ口もそこまでで、聖はその腕に抱きついた。
「あ…あの白薔薇さまが子供扱い…?!」 よしよしと、子供のように頭を撫でられている聖を見て、祐巳ちゃんはお口あんぐり。 そして私は、いつか見た光景だと、なぜか敗北感でいっぱいだった。
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反則気味な人を出してしまった(^^;。 |
2004.02.11 |