乃梨子さんち

 

「お邪魔いたします」

リビングの右手が乃梨子の部屋だった。6畳の和室にしずしずと入った瞳子は、もの珍しげに友人の部屋を見渡した。

「狭くてびっくりした?」

「いいえ!そんなことありませんわ」

瞳子は、勢い良く頭を振った。思いもよらず真剣な顔だ。

きっと、彼女の部屋に比べたら、半分にも満たないのに違いないのに。

友人の好ましい一面を垣間見た気がして、乃梨子は微笑んだ。

「そこら辺、適当に座って」

 

 

「あら…これはパソコンですのね」

和室の中で、その無機質な物体は、無視したくても不可能な存在感を誇示していた。

乃梨子は習慣でスイッチをONにした。

「うん、そう。瞳子でもパソコンなんて知ってるんだ」

「あら。偏見はいけませんわ。我が家にも先日、DDTというものが導入されましたの」

胸を張って瞳子は言う。えへん。

「…それって、もしかしてFTTHのこと?」

「そうそう、それです」

「…今、お茶持ってくるから待ってて。それ使っててもいいから」

「あら、どうぞお構いなく」

 

 

「………」

乃梨子が部屋を出ていくと、沈黙が落ちた。

「パソコン」をちらりと見る。以前、触ったことがあるので、簡単な使い方くらいは知っている。

画面にはちょうど、ブラウザが立ち上がったところだった。

「………」

好奇心がむくむくと頭をもたげる。

乃梨子さんは、普段どんなページを見ているのかしら。

でも、お友達とはいえ、他人のプライベートを覗き見するなんてはしたない。

………でも。

「乃梨子さんも、使ってていいとおっしゃったし…」

 

 

ちょっとドキドキしながら、瞳子はブックマークを開いた。

 

「タクヤの仏間」
「仏像研究」
「国宝仏像」
「全国仏像めぐり」
「仏像に見る日本史」
「世界の仏像」
「仏像世界/初心者のための仏像入門サイト」
「仏像彫刻ワールド」
「仏像事典」
「仏像でいこう」

 

「………」

 

Google「仏像」で本当にボロボロ出てくる(笑)。

2004.02.23

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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