またあした |
「申し訳ありません。お夕食までご馳走になってしまい…」
瞳子は、恐縮しきった様子で、肩をすぼめたまま頭を下げた。 学園祭の劇に関する打ち合わせを簡単に済ませるはずが、予想外のことに時間を使ってしまい、気を利かせた菫子さんが夕飯を用意してくれていた。 「いいのいいの。大勢で食べた方がおいしいでしょ」 「遠慮しなくていいよ。いつも2人だけの食事だからさ」 「…お言葉に甘えさせて頂きます」
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「おいしい…!」 「ホントに?…菫子さん、レパートリーが少ないからなあ」 「文句言うなら、リコ、あんた自分で作んなさいよ」 「いいえ、本当においしいですわ」 おみおつけの椀を置いて、瞳子はにっこり笑った。 「どうもありがと。…ほら、リコは何か言うことないの?」 「はいはい。おいしいです、とっても」 2人のやり取りに、瞳子はくすくすと小さく笑った。
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「ホントに送らなくていいの?」
すでに午後8時を回っていた。 立ち寄り届けを出しては来たものの、こんなに遅くなるとは思っていなかったので、瞳子は制服のままだ。 「平気です、バス停はすぐそこですし。これ以上、お手を煩わせられませんもの」 「そう? …じゃあ、また明日ね」 「はい、また明日お会いしましょう」 「バイバイ」 「お邪魔いたしました」 「また、いつでもいらっしゃい」 菫子さんの言葉に、瞳子はにこっと笑って、ぺこりと頭を下げた。
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瞳子が前の通りに降りていったのを見届けて、乃梨子は玄関に戻った。 「いい子じゃない」 「ときどき、憎たらしいけどね」 「ちょっと見は生意気そうだけど、内面はよく気の付く優しい子ね」 的確な菫子さんの人物評に、乃梨子はちょっと誇らしげに胸を張った。 「だって、私の友達だからね」
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最後はこんな感じでシメ。 |
2004.02.28 |