つたとしろばらのあね

 

「おっと、そこを行くのはカメラちゃんじゃない?」

銀杏並木をスキップしていた蔦子を呼び止める声ありけり。

「そのお声は…」

浮かれ顔から一転、獲物を狙う目になると、蔦子は反射的にカメラを構えた。

「おっ。…ハイ、チーズ♪」

振り返ったファインダー越しに、その方は頭と腰に手をやって、モデルのようにポーズを取った。

「………」

狙いをピクリとも動かさず、しばらくして蔦子はシャッターから指を離した。

 

 

「あれ、撮らないの?」

拍子抜けしたように、その方は言った。

「今撮っても、『あなた』が写せるとは思いませんので。ごきげんよう、佐藤聖さま」

カメラを下ろしてぺこりと頭を下げた蔦子に、聖さまは面白そうに目を瞠った。

「面白いこと言うね。さすがは祐巳ちゃんの良き理解者」

よくわからない賛辞に、蔦子は恐れ入りますと笑みを返した。

 

 

「相変わらず、写真撮ってるの?」

「ご覧の通りで」

「じゃあさあ…」

「志摩子さんの写真ですか?あるいは、その妹…」

「ピンポーン♪ 二条乃梨子だっけ? ある?」

「それは抜かりなく」

「ちょうだい」

「構いませんが、本人の同意が必要です」

 

 

「…私、志摩子の姉だよ?」

「存じてます」

「つまり、言うなれば孫の写真なんだけど」

「それでも、です。私なりの仁義にもとりますので」

「仁義ときたよ、この子は」

なんだか嬉しそうに、聖さまは口の端を持ち上げた。

「それに、聖さまだけが一方的に知っているというのは、不公平ではありません?」

ますます嬉しそうに、聖さまは呵々と笑った。

「よろしい、蔦子ちゃん。これからいつでもどこでも、私の写真を撮ることを許可する。余が許す」

「恐れ入ります」

ニカッと、蔦子も笑みを返した。

 

この二人の組み合わせ、実はすごく好き

2004.03.03

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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