つたとしろばら(結果報告)

 

「志摩子さん」

薔薇の館から校舎へ向かう背中を蔦子は呼び止めた。

「あ、蔦子さん。どうだった?」

蔦子は、ぺろりと舌を出した。

「調子に乗って、少し怒らせてしまったみたい。後で伝えておいて、からかったりしてごめんなさいって」

それだけで、志摩子にはやり取りの一部始終が見えるようで、口元に手を当てて、控えめに笑った。

「大丈夫。あの子のことだから、きっと気にしていないわ」

そんな表情を遠慮なくカメラに収めながら、蔦子は志摩子に向き直った。

 

 

「わかるんだ」

「それは姉妹ですもの」

志摩子は微笑んだ。気負いも何もない、いい顔だった。

「こりゃ、ごちそうさまでした」

ぺしっと額を叩いて、蔦子はおどけた。

「学園祭、楽しみにしていて。きっといい具合に仕上げてみせる」

「ええ、楽しみにしているわ」

 

 

学園祭当日。

 

「ああ…本当にあの写真だ。しかも、こんなに大きく」

巨大なパネルの中で、無防備な表情をさらす自分を見て、乃梨子はがっくりと肩を落とした。

並んでその写真を見ながら、志摩子は妹に微笑みかけた。

「そう?とてもいい顔をしていてよ」

「志摩子さんまで…」

「だって、ほら…。私と一緒の時のあなたの顔だもの。蔦子さん、よほどよくあなたのことを見てくれていたのね」

「………」

 

 

 

「いとしい時間」

(撮影・武嶋蔦子)

 

 

パネルの中にたたずむ二人は、とても幸せそうだった。

こんな顔してたのか、私。

なんだか納得したように、乃梨子は一つ、うなずいた。

 

このシリーズも終了。割と満足のいく出来になりした。

2004.03.05

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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