ぼうきゃく

 

「いよいよ再来週ね」

わくわくと目を輝かせて、祐巳は隣を歩く由乃さんと志摩子さんを見た。

「ふふ…そうね」

スキップになりかけの祐巳の歩調を見て、志摩子さんもつられて笑った。

「…祐巳さん、はしゃぎすぎ」

「えっ、由乃さんは楽しみじゃないの?」

「楽しみじゃないわけじゃないけど」

由乃さんは眉根を寄せてため息をついた。

 

 

「うちは令ちゃんがもう、うるさくって。修学旅行にはついていけないから、何かあったらどうしようとか。一人で具合が悪くなったら大丈夫かとか」

「令さま、心配性だから。…でも、そっか。しばらく会えないんだもんね」

祐巳は、祥子さまの顔を思い浮かべた。お姉さまとも、しばらく離ればなれか…。

「でも、修学旅行は、ほんの数日の間だし…」

そう言う志摩子さんの顔も、なんとなくすっきりしなかった。乃梨子ちゃんやほかの一年生とも、当然しばらく会えない。

 

 

「イタリアか…」

遠いな…。

ぽつりと呟いた祐巳の言葉に、三人は同時にまてよ、という顔をした。

何か、とても大切なことを忘れているような‥。

 

「待って…イタリアといえば」

「そうよ、イタリアといえば…」

「イタリアといえば!」

 

 

「パスポート!」

 

「それだ!」

「それよ!」

「どうしよう、海外なんて行ったことないから、すっかり忘れてた」

「今からでも、まだ間に合うかしら」

「とりあえず、祥子さまに聞いてみよう。まったくもう、令ちゃんったら、肝心なトコ教えてくれないんだから!」

 

静さま「あなたたち…だれか1人くらい思い出しなさいよ(遠い目)」

2004.03.06

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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