紅薔薇台風 |
M駅へと向かういつものバスは、混雑していた。 「うぎゅぅっ…ご、ごめんなさいお姉さま」 つま先立ちで耐えていたのだが、揺れた拍子に思い切りお姉さまの胸に顔を埋めてしまい、祐巳はあわわとパニック。 「そのままでは危ないわ祐巳。いいから、もっと私にしがみつきなさい」 「えぇっ!そ、そんなっ?!」 有無を言わさず、祥子さまは空いている片手で祐巳を抱き寄せた。 「(あわわわわわっ…!)」
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「それにしても、今日はどうしてこんなに混んでいるのかしら」 ゆでだこになっている祐巳には気付かずに、額の汗を拭えない祥子さまは、不快そうに眉を寄せた。 もはや、混雑とかいう生易しいレベルではない。 見渡す限りリリアンの制服だからいいようなものの…。
ぎゅうっ。 「あっ、ごめんなさい!」 「…いいえ、お気になさらず祐巳さま♪」
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ぎゅぎゅう。 「あら、ごめんなさい。失礼したわ」 「…いいえ、全然平気ですわ紅薔薇さま(ぽっ)」
バスが揺れるたびに、誰彼かまわず体を密着させてしまう。 祐巳はもう、何度謝ったかわからなかった。
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……… このように最近では、紅薔薇さま、そして紅薔薇のつぼみと合法的に密着できるという理由で、バス通学の生徒が急増している。 中には、紅薔薇姉妹の下校時間に合わせてバス待ちをしている生徒も多いとか。 フレンドリーで親しみやすい性格がブレイク中の紅薔薇のつぼみだが、思わぬ弊害を生み出しているもよう。文字通り「台風の目」となっている。 (記事:山口真美)
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アニメではベンツで送ってもらっていましたね、祥子さま。 |
2004.03.07 |