胸の中へ

 

「令ちゃんっ」

ばふっ。

「こ、こらぁ由乃。いきなり何すんの」

「えへへー」

「ほら、祐巳ちゃんが見てるじゃない」

「いいじゃない、別に。令ちゃんはいやなの?」

「……やじゃない」

 

 

「相変わらず仲良いね…由乃さんと令さま」

すっかり上機嫌になって体育館へと歩いていった令さまを見送ってから、祐巳は声をかけた。

「実はね。昨晩、珍しく編み物で失敗したんだって。朝からしょげてたから」

「ああ…それで」

「そ。祐巳さんも祥子さまにやってみれば?結構きくかもよ」

「うーん…」

やってみた。

 

 

「お姉さまぁ!」

ばふっ。

「もう、どうしたの祐巳、いきなり」

「えへへ…ちょっと、やってみたかったんです」

「仕方ない子ね」

しようがないわねという口調の祥子さまだが、抱きついてきた祐巳の身体を離そうとはしない。

(………あれ?)

 

 

「………」

「…? 祐巳、どうかして?」

「………いえ、ちょっとめげてるだけです」

「?」

 

個人差というものは、広がる一方なのだろうか。

しくしくと、祥子さまの胸に顔をうずめる祐巳であった。

 

胸の中へ♪胸の中へ♪行ってみたいと思…(殴)。

2004.03.10

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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