売約済み(契約これから)

 

今日は、演劇部が休み。

連日、文化祭に向けて忙しい山百合会のお姉さま方の手伝いをしに、薔薇の館にいる瞳子であった。

さっきから少し、落ち着きがない。

(祐巳さま。用があるって、どこかに行かれてしまったけれど、なんなのかしら)

薔薇の館の前で肩をポンッと叩いたまま、かばんを預けてどこかに走り出してしまったのである。

 

 

(可南子さんはここにいるし、気になるなぁ)

そこへ、祥子さまが入ってきた。

「ごきげんよう。祥子お姉さま。紅茶でよろしいですか?」

今日、乃梨子さんは、日直で少し遅れているから、1年生は瞳子と可南子。でも、先に立ったのは瞳子だった。

「ごきげんよう。瞳子ちゃん。ありがとう。ところで、祐巳は?」

「さっき、用があると、駆け出していってしまいました」

「そう・・・」

祥子さまはそれ以上何も聞かずに席についた。瞳子の隣の隣。

つまり、祐巳さまの隣の席だ。

「どうぞ」

お茶を出して、席に着こうとしたとき。事件は起こった。

「ぶっ!」

 

 

あろうことか、潔癖症で超お嬢様の祥子さまが、思いっきり口に含んだ紅茶を噴出した。しかも、瞳子の背中に向かって。

「きゃあ!!」

ある程度の距離を保っていたので、さほど濡れはしなかったが、驚いて、思いっきりのけぞってしまった。

(何?!)

「ごめんなさい。あまりにも背中が印象的だったから・・・」

(背中?!)

手を伸ばしてみると、カサッとかすれた音がした。紙だ。

ビリッとはがしてみてみると、瞳子にとっても衝撃的なことが書いてあった。

(・・・・!!!)

 

 

お姉さまと呼ばせてみせます。

   by祐巳」

 

祥子さまはせきたて、可南子は青ざめ、瞳子は震え、入ってきた乃梨子はのけぞった。

(祐巳さまって・・・)

そのころ当の本人はというと。

 

「この本、返却お願いします」

図書館のカウンターでカードと本を差し出しているのだった。

 

みゃあ「予約ってところでしょうかね(笑)」

2004.03.12

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

お名前  mail

  ご意見・ご感想などありましたらどうぞ。