やっぱり妹が好き。 |
「真美とのなれそめ?」 卵焼きのおわびに、2人に飲み物をおごってくださるという三奈子さまが、自販機の前で振り返った。 「うーん…そうね。どうだったかしら」 祐巳に緑茶、由乃さんにミルクティーの缶を渡しながら、三奈子さまは首を傾げた。 「覚えてらっしゃらないんですか?」 義憤に駆られた由乃さんは、ちょっと非難を込めて訊ねた。 「いえ、そうじゃなくてね。いつの間にか、姉妹になってたのよね」 「はあ?」
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「部活見学の初日から部室に来てたんだけど、翌日には、もうずっと前からいるみたいに馴染んでたわね、あの子」 それは真美さんらしいと、祐巳は思った。 「正直、なぜ納得したのかよく覚えてないのよ」 「真美さんを妹にすることを、ですか?」 「いえ、真美が私の妹になることを、よ。実際、私はまだ当時、部長だったわけでもないしね。選択肢は色々とあったと思うんだけど」 三奈子さまは、ウーロン茶の缶をゆっくりと揺すった。 「私と違って、主観を廃した客観的ないい記事書くし、感情的に取材に走ることもないし、過ぎた妹だとは思うけどね」 三奈子さまの意外な一面を見たようで、由乃さんは目を丸くする。
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「でも、あの子の姉になるなら私しかいないだろうって、なんとなく思っていたわね」 いつの間にか、祐巳も由乃さんも、黙って三奈子さまの横顔を見つめていた。 それは、お姉さまが自分を見るときと、おんなじ顔。 「だから、初めてお姉さまって呼んでくれたときは、嬉しかったわ」 「「………」」 「あ、あら?どうしたの二人とも」 祐巳と由乃は、顔を見合わせて、うふふーと笑った。 「三奈子さまって、真美さんのこと、とても大切に思ってるんですね」 「しかも、結構ロマンチスト」 「な……!」 新聞部の元部長ともあろう者が、思わず余計なことを口走ってしまっていたようだ。 みるみる顔が真っ赤に染まる。
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パシャッ! 「その顔、いただき!」 「!武嶋蔦子っ」 いつからそこにいたのか、シャッターチャンスは逃さない、写真部のエースがカメラ片手に立っていた。 「ちょっ、ちょっと、その写真どうする気?!」 「別に写真をネタに揺するようなことはいたしませんからご安心を。でも、良い写真ですから、世に出すべきだと思いますけど」 「やめてちょうだいっ」 蔦子さんを追いかけて行きかけた三奈子さんは、忍者のように後ろ向きに走ってきて、ヒソヒソと念を押した。 「…さっきのこと、真美にはナイショよ」 祐巳は由乃さんと肩を叩き合って笑った。やっぱり、三奈子さまも一人のお姉さまなんだと。
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また4コマっぽくない話に(^^;。 |
2004.03.17 |