すきんしっぷ |
薔薇の館の2階。 室内には、紙の上を鉛筆が走るサラサラという音と、ノートのページをめくる音だけが響いている。 今、この場所にいるのは、紅薔薇のつぼみとその妹、小笠原祥子だけ。 ぺらり。 サラサラサラ…。 ぺらり。 「お姉さま…」 「ん?どうしたの、祥子」
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「ここ…計算が間違っていますわ」 祥子の指し示したページをどれどれ…と覗き込み、蓉子さまは肩をすくめた。 「あら、本当。しようがないわね、あとで江利子に注意しておくわ」 「はい」 祥子は頷いて、書類のチェックを再開した。 ぺらり。 サラサラサラ…。
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窓の外からは、晩冬の穏やかな日差しが差し込んでいる。 「お姉さま…」 「ん?どうしたの、祥子」 「ここ…収支計算が合いません」 どれどれ…と書類と添付された領収書を見比べると、確かに金額が合わない。 「あら、本当。しようがないわね、あとで聖をシメておくわ」 「はい」 ぺらり。 サラサラサラ…。
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「お姉さま…」 「ん?どうしたの、祥子」 「……いえ、何でもありません」 言い淀むと、黙々と作業を再開する。 その、何か言いたげな無言の横顔を見て、蓉子さまはくすっと笑うと腕を伸ばした。 「仕方ない子ね。言いたいことがあるなら、言ったらどう?」 なでなで…。 子供のように頭を撫でられながら、祥子は赤い顔で決まり悪そうにそっぽを向いていた。
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蓉子「祥子ったら、構ってほしかったのね♪くすくす…」 |
2004.03.20 |