洗い髪を軽くきゅっと絞って、私は湯船に体を沈めた。

…ふぅ。

気持ちがいいですわ。

こうしていると、一日の疲れが溶けていくよう…。

本来であれば、もうしばらくこのひとときを楽しんでから、キューティクルケアの仕上げをするところですが。

…まあ、今日はいいですわね。もう上がりましょう。

ザバッ…。

　

　

ブォォーーー……。

ドライヤーの風を当てながら、毛先をチェック。

淑女の身だしなみです。

縦巻きロールはお手入れが大変なのですわ。

誰かに片方だけ摘まれたり引っ張られたりすると、形を整えるのも大変なのですよ？

カチッ。

いつもはこの後、丁寧に梳くのですが…今日はよしとしましょう。

　

　

ぶるっ。

それにしても、この廊下は寒いですわ。

もう冬がそこまで来ているということですわね。

カーディガンを引っかけてくるべきだったかしら？

……まあ、我慢しましょう。

プルルルル…。

「！」

プルルルル…。

　

　

…カチャ。

「はい。松平でございます。

　…ああ、祐巳さまでしたか。

　こんな時間に、何のご用です？

　…え？後で電話をかけるとおっしゃった？　

　あらそうでしたか？すっかり忘れておりましたわ。

　それで、ご用件は…」