虎穴に入らば虎児となる |
放課後―――令は薔薇の館の前に立っていた。 「私…なんでここにいるんだろう」 まだ部活は始まらないし、今日は学校を休んでいる由乃を見舞おうと思っていたのだが…。 手の中のロザリオを見る。 決して、あの方の妹になるのが嫌なわけではないが、お互いのことを知らなすぎる。 とにかく、いったんこれはお返しして、お話をしなくてはと、生真面目な令は入り口をくぐった。
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薔薇の館に入るのは、もちろん初めてだ。 1階はシン…として人の気配がなかった。 ぎしぎしいう階段をおそるおそる上りながら、ここに江利子さまがいるんだろうか…と令は階上を見上げた。 一度、深呼吸をして、令はビスケットのような扉をノックした。 こんこん。 「どうぞ」 江利子さまの声だ。令はゆっくりと扉を開けた。
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「ようこそ、薔薇の館へ!」×5 「なっ……」 出迎えたのは、華やかな顔、顔、顔。だれもかれも、入学式の時に見覚えのある上級生の顔ばかりだ。 リリアン高等部生徒会、山百合会のそうそうたるメンバーである。 「まあ、この子が江利子の妹なのね!」 「ふぅん…くすくす、これは確かに逸材だわ」 「山百合会へようこそ。…もう、こんな晴れの日にサボリだなんて、聖ったら」 「入学式早々に妹をつくるなんて…江利子らしいわ」 (すっかり根回しされてる―――――っ!!)
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がびーんと衝撃を受けている令の前に、ヘアバンドの彼女―――鳥居江利子さまが優雅に進み出た。 「いらっしゃい、令。ちゃんと来たわね、偉い偉い」 そして、にっこり…というよりは、にやりと笑った。 「お姉さま方、ご紹介いたしますわ…」 「あ、あのですねっ!」 「あら、入ってきてあいさつもなしなの?」 「あ…ええと、新入生の支倉令です。初めまして…」 「というわけで、彼女が私の妹です」 (ま、また乗せられてる……) もはや完全に江利子さまの手の中にいる令だった。
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意味:一年生が薔薇の館に関わると、必ず妹にされてしまうという喩え。 |
2004.03.23 |