二兎を追う者、一挙両得 |
「ひとつ、お聞きしてもいいですか」 ええ、もちろんと江利子さまは頷いた。 「あなたの妹になるということは、山百合会の末席に名を連ねるということですよね」 「まあ、そうなるわね」 あまり深く…というかそんなことは全然気にしていなかった江利子さまは、そういえば…と頷いた。 「私はすでに、剣道部に入部届を出してきてしまいました。…となると、かけもちということになります。それに…」
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「島津由乃ちゃんのこと?」 なぜそれを…と驚いた顔をすると、江利子さまは笑った。 「中等部では、あなたたち二人を知らない人はいないんだそうよ」 由乃。 可愛いかわいいい従姉妹で、一番大切な由乃。 ただでさえ中等部と高等部に分かれてしまって、病気がちな由乃のフォローができなくなってしまったのに、このうえかけもちで忙しくなれば、どうしても彼女と過ごす時間は短くなる。 令は、そのことを正直に伝えた。 「…そういう事情なのは分かったわ」 でもね、と江利子さまは続けた。
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「でもね、だからこそあなたは、頑張るのだと思うのだけれど。剣道部も山百合会も、そして由乃ちゃんのことも」 「え?」 「そうじゃないのかしら?」 不思議な微笑みに見つめられて、令は言葉に詰まった。 確かに、一年間、校舎と生活が離ればなれになることは、由乃とお互い話し合って、了解済みのことだった。由乃のことに気を取られて、高校生活が破綻するようではいけないのだ。 それにしても、なぜこの方は、私のことがこんなにもわかるのだろう。 「それに、山百合会のことは心配しなくていいわ。私は妹の助けがなければ何もできないような姉ではないのよ?」
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「貸して」 そう言うと、江利子さまは令の手からロザリオをさっと取った。 「どうする?これ、あなたの首にかけてもいいかしら」 あっけらかんとした声だった。 令は知らず、この方に惹かれているのを意識していた。 「…お受けします」 満足そうに頷いて、江利子さまは令の首にロザリオの鎖をかける。 それは、ずっとそこにあったかのように、令の胸元に収まった。
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意味:この場合、令ではなく江利子さまを指す。令と同時に由乃という孫までゲットする強運のこと。 |
2004.03.25 |