可愛い子には、猫可愛がり |
「話はまとまったみたいね」 それまで黙って成り行きを見守っていた山百合会の他のメンバーたちが、一斉に動き出した。 間近でいいものを見せてもらったわ、などと笑いながら、三人の上級生が令を囲んだ。 「あらためて山百合会へようこそ。歓迎するわ」と紅薔薇さま。 「さあさ、こっちへいらっしゃいな令ちゃん」これは白薔薇さま。 「すっかり江利子の口車に乗せられちゃったわね。あなた、だまされやすそうだから、気をつけなくてはダメよ?」 「え゛…」 黄薔薇さまの言葉に令が絶句すると、三人の薔薇さまはそろって、華やかに笑った。
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「さあ、こちらへ座って。顔をよく見せてちょうだい」 「令ちゃんはコーヒー?それとも紅茶がいいかしら?」 「最初は男の子みたいだと思ったけど、とても可愛いわ」 「ええと、あの…」 新しいおもちゃを見つけた子供のように、三人の薔薇さまにちやほやされて戸惑っていると、紅薔薇のつぼみ、水野蓉子さまにポンと肩を叩かれた。 「江利子の妹は大変だと思うけど、頑張ってね」 「は、はあ…(汗)」 憐れむようなその表情に、一瞬、令の顔が引きつった。
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「でも、江利子はいい妹だわ。こんなに早く、孫の顔を見せてくれるなんて」 「次は、蓉子ちゃんの番かしら。いいわねぇ、うちの聖には期待できそうにないし」 白薔薇さまの言葉に、蓉子さまは、どうでしょうかと微笑んだ。 「令ちゃんには、今度ちゃんと紹介するわね。私の妹、無愛想だけど、とてもいい子よ」 「はあ…」 この方たちの愛情表現は、随分と歪んでいるなぁ…と令は圧倒されっぱなしだった。 「はい」 そんな令の前に、紅茶のカップが静かに置かれた。
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江利子さまが、手ずからお茶を煎れてくださったらしい。 「あ、すみません。私が…」 「いいのよ、今日は。あなたはお客様なんだから。それより、飲んでみて」 「はい。 ………おいしい」 よかったわ、と笑う江利子さまの胸元で揺れるタイが、令の目に止まった。 「そのタイの形、とても綺麗ですね。………お姉さま」 「ありがとう」 令のお姉さまは、そう言って少し誇らしげに笑った。
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意味:可愛い子は、とにかく可愛がる薔薇さま方のこと。…そのまんまだ。 |
2004.03.26 |