黄薔薇未来図 |
「…それで、その鳥居江利子って人とスールになったんだ」 ヒヨコ柄のハンドタオルを頭に載せたまま、由乃はベッドの中から令ちゃんを恨めしそうに見た。 「うん、そう。それで、お姉さまったらね…」 わざと呼び捨てにしてみたり、口調に棘を込めて見るものの、浮かれた様子の令ちゃんは、気付きもしない。 そういうところもますます気に障って、由乃はさらに憮然となった。 もしかしたら、具合が悪い時の不機嫌と勘違いしているのかもしれない。 それくらいの違い、気付け!…と心の中で毒づいてみる。
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「お姉さまが言うにはね…」 「………」 令ちゃんのお姉さま談義は、まだ続く。 由乃は、あからさまなため息をついたが、令ちゃんは気付かない。 …吐息が熱い。まだ熱があるのだ。 わかっている。 これは不安だっていうこと。 校舎が分かれることになった時には、あんなにおろおろして、心配ばかりしていたくせに、入学式の翌日には、もう姉をつくったりして。すっかり「高等部の生徒」になってしまった令ちゃんに、一抹の寂しさを感じてるんだって。
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でも、だからこそ、そんなこと言えるわけない。 高等部の姉妹制度については、もちろん由乃も知っている。だから、それは当たり前のことなんだって頭では分かっている。 だけど、自分は入学式の翌日からベッドの中という現実と…。 令ちゃんが遠くへ行ってしまうような錯覚が、由乃を不安にさせるのだ。 そんな由乃の微妙な心に気付かず、へらへらしている令ちゃんに腹が立つのだ。 「…れで、お姉さまがね、由乃にも会うのが楽しみだって」 「……え?」 「だからね、お姉さまが、由乃に会うのを楽しみにしてるの」
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その瞬間、由乃の頭の中で、何かが切り替わった。 私と会うのを、楽しみにしてる…だってぇ? 「………」 「あ、あれ…? もしかして、由乃怒ってる?」 「………」 「ね、ねえ、由乃ぉ…」 情けない声を出す令ちゃんを完全に無視して、由乃は壁をにらみつけた。そこに、まだ見ぬ、鳥居江利子さまの姿を思い浮かべて。 きっと、その人とはライバルになる。 由乃は確信していた。
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そして、伝説へ…(笑)。このシリーズも長くてごめんなさい(^^;。 |
2004.03.27 |