レイニーブルー祥子編(惨) |
「祐巳ちゃん、どうしたの!?」 「聖さまぁっ」 濡れねずみでダイビングしてきた祐巳を受け止めた聖は、びっくりして震えるお下げを見下ろした。 「いったいどうしたの」 しかし、祐巳は何かが弾けたように泣くばかりで、答えはない。 「ああよしよし」 理由を聞くのはあきらめて、聖は祐巳の背中を優しくなで続けた。子猫の毛繕いをする母猫みたいに。 スッ…。 そこへ1つの人影が現れた。聖は視線を上げた。
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「……祥子」 聖は以上、言葉を続けることができなかった。 なぜなら、祥子はやはりずぶ濡れで、顔は真っ青。そして、今にも倒れんばかりにオロオロと目が泳いでいる。 「(ゆ、祐巳ちゃん以上にヤバイじゃない(汗))」 やがて、夢遊病者のようにフラフラと近づいてきた祥子は、静かに…というかビクビクと声をかけた。 「祐巳」 沈黙。 祐巳は聖の腕の中でいやいやと首を振るだけで、顔を上げようともしない。 「!!!!」 びくぅっ!
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聖は思わず声を上げそうになった。 …祥子の顔が、ムンクの叫びのような状態になっていたからだ。 ふぅっ… 祥子の口から、ため息っぽいもの(魂が抜ける音)が漏れた。 「お世話おかけします」 それだけ言うのがやっとという感じだった。 聖は、こくこくと反射的に頷いていた。お大事に…と思わず声をかけそうになる。 (大丈夫かな、あれ……あ、こけた) まるっきりコントのように、あっちへフラフラ、こっちでバタンと去っていく祥子の背中を、聖は冷や汗混じりに見送った。
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そのあと、小笠原家の迎えの車の中では…。 (ああ…祐巳…祐巳…) どどどどどどどど…… 『…!?…!!』 『…………』 瞳子ちゃんと運転手が、祥子の涙の海で溺れていた。 『むぐぅっ、むぐふむぬっ!(祥子お姉さま、あれあれ!)』 校門の前で声を上げている祐巳に気付いた瞳子ちゃんが、必死にそれを伝えようとするのだが… (祐巳に…祐巳に嫌われた…もう、おしまいだわあああああああ…) 気付いちゃいなかった。
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聖「祐巳ちゃん、祥子を見捨てないでやってよ(汗)」 |
2004.03.30 |