スタジオ薔薇の館。

　　「皆さんごきげんよう。
　　　リリアンショッピングのお時間です」
　　「ご、ごきげんようっ」

　　ぺこり、ごちん。

　　「祐巳、栄えある第一回目の放送なのだから
　　　あまり恥ずかしい真似をしないでちょうだい」
　　「うぅ〜……」
　　「本日はわたくし小笠原祥子と」
　　「ふ、福沢祐巳が素敵な商品を
　　　紹介させていただきます」

　

　

　　ジャン、という効果音と共に
　　祐巳が商品を取り出す。

　　「祐巳、こちらの商品は？」
　　「はいっ。これさえあれば煮物から
　　　揚げ物から、ありとあらゆる
　　　お料理をこなせるお鍋です」

　　おぉー、とどこかで録音されたであろう
　　見えない観客の歓声が上がる。

　　「素晴らしいわ。これさえあれば
　　　シェフも大助かりね」

　

　

　　「い、いえお姉様。
　　　普通の家庭にはシェフはいませんが」

　　お嬢様反応にたらりと汗を流す祐巳。

　　「あ、あらそうなの？
　　　わたくしとした事が、失礼いたしました」

　　ぺこりとカメラに頭を下げる祥子さま。

　　「え、えーと……ゆ、祐巳っ。
　　　こちらの商品、お値段はお幾ら？」

　

　

　　「聞いて驚かないでくださいお姉様。
　　　何と今なら特別価格でご提供です！」

　　ばばーん、と祐巳がフリップを取り出す。

　　「何とお値段３９万……あっ！」
　　「まあ安い！」

　　しーんと静まり返るスタジオ。
　　フリップには３万９千円と。

　　「ゆ、祐巳っ！あなたが値段を間違えるからっ！」
　　「あーん、怒らないで下さいお姉様ぁっ」