ムッ。 |
「きゃ、祐巳さまっ」 「紅薔薇のつぼみ!」 「白薔薇さまもご一緒よ、まあどうしましょう」 突然の紅薔薇のつぼみと白薔薇さまのご登場に、部員たちが黄色い声を上げる。
「…こんなところで何をしてらっしゃるのですか、祐巳さま?」 いつもの縦ロールを揺らして、冷ややかな目をした瞳子ちゃんが舞台から下りてきた。
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「あっ、瞳子ちゃん。ごめんね、続けて続けて」 「何をしてらっしゃるのか、聞いているのですけど」 うわぁ…瞳子ちゃん、機嫌悪そうと思いつつ、祐巳は体育館に来た理由を説明する。 「ええと…山百合会の劇でお借りする大道具のことで部長さんと相談をしていた…んだけど」 ね?と隣に目で訴えると、志摩子さんはおっとりと頷いた。 「そうですか。用事がお済みになったら、お戻りになったらいかがです。私たちも部活動中ですので」 「ごめん、邪魔するつもりじゃなかったんだけど…」
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「あら、よろしいんですのよ、祐巳さま!」 「そうですわ。白薔薇さまに紅薔薇のつぼみが見学してくださるなんて、演技に一層身が入ります」 「ぜひ、しばらく見ていってくださいませ」 瞳子ちゃんを除く部員たちは、口々に祐巳を引き留める。 「えっ、だけど。…いいの、瞳子ちゃん?」 部員たちに囲まれ、嬉しさ半分、困った半分の表情の祐巳に、瞳子ちゃんのカモメ眉毛が角度を増した。
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「…勝手になさればよろしいですわ」 ぷいっ。 「あっ、瞳子ちゃん…」
さあさあこちらへ…と部員たちに手を引かれながら、怒らせちゃったかな…と祐巳は少ししょんぼりした。
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今回はタイトルがすべて。 |
2004.04.05 |