挑戦者あらわるっ!

 

「ごめんね、瞳子ちゃん。涙が止まらなくなっちゃって…」

「もうよろしいですわ…」

大洪水が訪れた後の祐巳の顔を見て、瞳子はげっそりとため息をついた。

正直、早く帰ってもらいたい。

こうも自分のテリトリーでペースを乱されたのでは、身体がもたなかった。

「でも、本当に素晴らしかったわ瞳子ちゃん」

白薔薇さまが、率直な賛辞を述べる。

 

 

「…ありがとうございます」

演技を褒められるのは慣れているので、どうしても返事がそっけなくなってしまう。

「本当、瞳子ちゃんってすごいよね」

「えっ…」

どきん。

「だって、カツラをつけなくてもジュリエットに見えるもん」

「褒めるのはそこですかっ!?」

ああ…また祐巳さまのペースにはめられている。瞳子は頭痛がした。

 

 

その時、ひそひそと話し合っていた部員たちが、並んで祐巳さまと白薔薇さまの前に立った。

「あの…もしよろしかったら、お稽古に参加して頂けませんか?」

「ええっ?」

「な゛っ…」

「祐巳さまは昨年、シンデレラを演じられたでしょう」

「といっても、姉2だけどね、ははは」

「でも、シンデレラ役も練習していたと聞き及んでおりますわ」

「ぜひとも、お二人の演技を拝見して、参考にしたいのです」

 

 

「参考だなんて、そんな大層なものじゃ…」

「私は構わないけれど」

「志摩子さん?!」

きゃーっと一堂から歓声が上がった。

「瞳子さん、お相手して差し上げて?」

「なぜ私がっ?!」

「だって、瞳子さんはジュリエットですもの。紅薔薇のつぼみと白薔薇さまのロミオ…ああ、ステキ」

「勝手に話を進めないでください!」

だれも聞いていなかった。

 

志摩子さんの影が薄いなぁ(^^;。

2004.04.07

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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