ハッカの風はもう吹かない

 

「白薔薇さまは、変わられましたわね」

「え?」

クラブハウスに寄っていくからと、祐巳さんが体育館を出ていって、部活動を終えた瞳子ちゃんと志摩子は、二人で薔薇の館へ戻ることになった。

しばらく無言のまま歩いていたところ、発せられたのがそんな瞳子の言葉だった。

「興味本位で誘われた演劇部の稽古に付き合われるなんて思いませんでした」

その言葉に込められた軽い非難は、志摩子が了解しなければ、祐巳さんと芝居をしなくて済んだのに、というものだろう。

 

 

「なぜですの」

縦ロールを一つ揺らして、瞳子ちゃんが挑むように聞いてくる。

そうね、と首を傾げてから、志摩子は目を細めた。

「楽しそうだったから、かしら」

「えっ」

まさか、そんな言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。瞳子ちゃんは思わず、まじまじと志摩子を見た。

「瞳子ちゃんは、祐巳さんを嫌い?」

 

 

「…嫌いじゃありません。でも祐巳さまは」

どうだか分かりませんけれど、と素っ気なく瞳子ちゃんは呟いた。

その憂いを帯びた横顔をちらりと見て、志摩子は言った。

「祐巳さんは、あなたが好きよ」

「えっ」

くるくる変わる表情を見ながら、こういうところは祐巳さんに似ているわね、と志摩子はもちろん声には出さずに呟いた。

「…どうして、そんなことがお分かりになるんですか」

 

 

「分かるのよ」

そう言う白薔薇さまの横顔は自信に満ちてすらいて、瞳子には反駁することができなかった。

「でも、よかった。瞳子ちゃんが、祐巳さんを好きで」

「好きじゃありません!嫌いではないというだけで…」

「そうだったわね」

ふふふ、と白薔薇さまは微笑んだ。

瞳子は何故かとても気恥ずかしくて、そのまま薔薇の館につくまで顔を上げることができなかった。

 

4コマ目で視点入れ替えをしてしまった(^^;。

2004.04.09

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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