奥様戦隊の午後 |
「…ねえ江利子。卒業してまでこんなことするの、もうやめない?」 茂みの陰にこっそりうずくまり、両手で木の枝を捧げ持っている友に、最近ちょっぴり近寄りがたいものを感じる水野蓉子さん、19歳。 「あら、そんなこと言っていいわけ?今日のターゲットは、祐巳ちゃんの妹候補の呼び声が高い二人なんだけど」 「何してるの。行くわよ江利子、聖」 「………」 「………」
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「で、その二人って?」 「私に聞かないでよ。顔を知ってるのは聖だけなんだから」 「似顔絵を描きましょう。聖、特徴お願い」 カメラちゃん探した方が早いんじゃないかなぁ…と思いつつ、聖は首をひねった。 「えーと、確か目と鼻と口がついてて…」 「「………」」 ぐりぐりぐり。 「真面目にやりなさい」 「わっ、わかった、わかったから今どき梅干しはやめてぇっ」
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「まず一人目は…」 「ふんふん」 聖の説明に従って、手帳に描き込んでいく江利子。 ほどなく、二枚の 「「こ、この絵は…」」 瞳をキラキラさせて、しなを作りながら、うなりを上げて回るドリルに顔の両端を占拠された少女。 電信柱の陰からはみ出している、無闇やたらとでかい、髪長少女。
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「…江利子、あなた芸術学部でしょう確か」 「うるさいわね。フィーリングよ、フィーリング」 「…いやぁ、かなりいい線いってるかも」 「「うそっ?!」」 聖の指さす方向に、そのまんまな二人がいた。
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こうした地道な努力が、決定的瞬間を捉えるための布石(笑)。 |
2004.04.15 |