聖さま・景さま、イタリア漫遊記・その4

 

 企んだ事は勿論、企まざる何気ない行動まで、辛辣な悪戯になってしまう。
 佐藤聖。
 悪魔の尻尾を持つ聖女の正体を、まざまざと見せつけられたかのような、今日一日だった。

 

 

 予定ではフィレンツェには1泊せず、夕方の特急でヴェネツィアに立つことになっていた。
 だからバスで市内に戻った私は鬼の様な勢いでショッピングに邁進した。だって、これ無くして、何の為にイタリアに来たか、分からないではないか。
 フィレンツェと言えば貴金属工芸と革工芸。前者は貧乏学生ゆえ無視して、革工芸品を探求した。
 無印ながら良品でお値打ち品が、ある!ある!ある!。私は至福の思いで店から店へ、品定めに走り回った。

 

 

 ある革細工店で、佐藤さんの魔性が目覚めた。
 私がバッグを物色している間に、店で買っているインコにとんでもない日本語を教え始めたのだ。
「フィレンツェよいとこ1度はおいで」
『フィレンツェヨイトコイチドハオイデ』
「フィレンツェ煎餅、フィレンツェ煎餅!」
「フィレンツェセンベイ、フィレンツェセンベイ」
 私は、
「もう辞めなさいよ、佐藤さん」
 と叫んで、その場から引き離したのだが、その声すら『モーヤメナサイヨ…』とコピーされてしまう始末。
 お気に入りのバッグがあってのに、私は赤面してその店を飛び出さねば成らなかった。

 

 

「ゼーハー、ゼーハー…」
息を整えながら詰問した。
「ねえ、言うに事欠いてなんだけど、フィレンツェ煎餅って何よ?」
「んんーー、んんん」。頭を掻きながら彼女は答えた
「去年、こっちに来た下級生におみあげはなにが良いかって聞かれた時にね。
“あー、それだったらローマ饅頭”か“フィレンツェ煎餅”が良いって答えたのよ」
「…それで?」
「彼女、マジで捜し回ったみたい。だからよく覚えてるんだけどね」
 私は眼鏡越しに彼女を睨みつけ、言った。
「あんた、鬼ね」

 

(みゃあ)景さんがショッピングに奔走している光景が想像できない(笑)。

2004.04.22

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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