かえりみち

 

「家まで送っていくよ」

という柏木さんの申し出を丁重に(或いはすげなく)断って、まだ降り止まない雨の中を祐巳と蓉子さまは歩いた。

祥子さまの彩子お祖母様の家からの帰り道。

 

 

清子おばさまからお借りした雨傘を差して半歩前を歩く蓉子さまは、学校で祐巳を呼び出した後と同じように、無言だった。

ちらりと祐巳が覗き込んだ横顔は、いつもと変わらない、お美しく毅然とした蓉子さま。

直ぐに2人は駅に着き、切符を買うと、折良くホームに入ってきた電車に乗り込んだ。

ちょうど2つ空いた座席を見つけて、収まる。

 

 

雨音が、電車の窓を微かに叩く。

祐巳は思い切って、ほんの数センチだけ、おしりを蓉子さまの方へ寄せた。

「?なあに」

少し驚いたように見返す蓉子さまに、えへへ…と笑いかける。

鋭い蓉子さまは、すぐに祐巳が気を回したことに気付いたらしい。祐巳が知っているいつもの優しい顔で微笑んだ。

「祐巳ちゃん、今日はありがとう」

「いえ、そんな…」

 

 

「本当にあなたって…」

言いかけて、蓉子さまはえいっと祐巳の頭を抱え込み、ぐりぐりと頭を撫でた。

今度は祐巳の方が目を白黒させる。

そんな祐巳の顔を見て、蓉子さまはますます楽しげに笑った。

「スキンシップは聖の担当だったけど、今はその気持ちが分かるわね」

 

この組み合わせもなかなか見ないんですよね。

2004.04.26

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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