仲良し姉妹のススメ

 

「紅薔薇さま、お姉さまはクラスの方に寄ってから帰られるそうです」

ビスケット扉を開けて、令が入ってきた。

1人で書類の整理をしていた紅薔薇さまは、顔を上げて、とんとんと肩を叩いた。

「あら、それじゃ今日はここまでにしましょうか」

祥子は家の都合で先に帰ったし、志摩子は委員会の仕事、白薔薇さまはフラッと出ていったきり帰ってこない。

 

 

紅薔薇さまはテーブルの上を片づけながら、同じく帰り支度をしている令を見た。

「2人っていうのは久しぶりね」

「そうですね」

コートを羽織りながら、相変わらず男装の麗人にしか見えない一学年下の少女は、軽く微笑んだ。

「忘れ物ない?」

電気を消して外へ出ると、初秋の空には、はや星が瞬き始めていた。

鍵を閉め終わった令とともに歩き出す。

 

 

「すっかり暗くなっちゃったわね」

「ええ」

もとよりおしゃべりではない令だが、なんとなく返事が上の空だ。

横顔を盗み見ると、彼女はなんだかそわそわしていた。

「あ、そうだ。家庭科の授業でクッキー焼いたんですが、いかがですか」

いそいそと鞄から包みを取り出す令を見て、紅薔薇さまはピンと来た。

確か今日、由乃ちゃんが風邪で休んでいたはず。

 

 

「私に気を遣わなくていいから、ほら。そのクッキー持って、愛しい妹のところに急ぎなさい」

「え…でも」

「でも、じゃないの」

紅薔薇さまは、めっという風に軽く令をにらんだ。

「じゃ、じゃあ…お先に失礼します」

マリア様へのお祈りももどかしげに、駆けていく令の後ろ姿を見ながら、蓉子さま忍び笑いを漏らした。

いいわね、あそこの姉妹は仲が良くて。

いつものように手を合わせてから、あとで久しぶりに祥子に電話してみようと、軽い足取りでバス停へと向かう紅薔薇さまだった。

 

珍しい組み合わせシリーズ。…やはり難しい。

2004.05.02

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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