あいすくりぃむ・一段目 |
志摩子がその駅で降りたのは、いくつかの偶然が重なってのことだった。 最初は、駅前までのちょっとしたお使いのはずだったので、着物のままだ。 遠くから姿を見かけて…というより、まさに「ばったり」という感じだった。 考えてみればその駅は、リリアンを起点に見るとK駅より遠いが、その方の自宅からは、むしろ近かった。 とにかく、振り向いた瞬間だった。
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佐藤聖さま。 こんなところで会うとは思わなかったのだろう。あちらも、意外そうに目を丸くした。 「や。」 「あ、ご、ごきげんよう、お姉さま」 しばし、二人はまじまじとお互いの顔を確認した。 やおら、聖さまがにんまぁ〜という笑みを浮かべた。 祐巳さんに抱きつこうとする時の顔にそっくりだった。
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「待って」 言うなり、聖さまは軽快に身を翻すと、人混みに消えた。 志摩子が呼び止める間もなかった。 こんなところでお姉さまに会うのが意外なら、こんな場所で置き去りにされるのも予想外のことだった。 志摩子は人混みの中、ぽつんと一人待った。
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やがて、消えたときと同じように、唐突に聖さまは戻ってきた。 「はい」 にっかぁ〜と再び白い歯を見せて笑うと、聖さまは両手に持っていたものを差し出した。 それは、二段重ねのアイスクリームだった。
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和服志摩子さん。 |
2004.05.05 |