足音比較・二歩目 |
「まあ、そうだったの。…確かに、人によって特徴があるかもしれないわね」 乃梨子から紅茶のカップを受け取りながら、志摩子さんは頷いた。 「ほら、言ってるそばから、次がやってきたわよ」 ぎし…ぎし…。 先ほどと同じく、静かでゆっくりとした足取りだ。 「祥子さま…かしら」 「いいえ、違うわ」
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妹としては、お姉さまの足音だけは間違えるわけにはいかない。これは、お姉さまではない。 「これは…志摩子さん!」 「…祐巳さん、私はここにいるのだけれど」 「あ、あれっ?!」 祐巳の大ボケに、さすがの志摩子さんも顔にタテ線。 「可南子さんでは…?」 乃梨子ちゃんが、控えめに言う。
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確かに、この静かな足取りの心当たりといえば、残るのは彼女か? 全員の答えを聞き終えてから、由乃さんが口を開いた。 「これは、令ちゃんよ」 「えー!」 さすがにそれはないだろうと、残る全員の声が唱和する。 令さまなら、もっと階段をギシギシ言わせながら勢い良く上ってくるはず…。 しかし、由乃さんは自信たっぷりだ。
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…カチャ。 果たして、現れたのは黄薔薇さまこと支倉令さまその人。 「ほっ、ほんとだ!」 どうして分かったの?!と振り向く祐巳に、 「今朝からケンカしてるのよ」 お姉さまに向かってアカンベーをしながら、由乃さんは答えた。 足音に勢いがなかったのは、それでか…。
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祐巳「そ、それは反則じゃあ…」 |
2004.05.08 |