強祐巳・姉よ… |
「ふーん。つまんないな」 柏木さんは本当につまらなそうに、アイスグリーンティーの氷をカリカリと奥歯でかみ砕いた。その後ろで、突然音もなくすーっと引き戸が開いた。 「失礼いたします」 「うわっ」 祐麒が素っ頓狂な声を上げた。
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「いらっしゃいませ」 丁寧に下げた頭を見て、今度は祐巳が「あっ」と声を出した。この強靱なバネのような縦ロールは―――。 「瞳子ちゃん♪」 「…ごきげんよう。やはり、祐巳さまでしたの」 瞳子ちゃんは部屋の中にするりと身を滑り込ませると、引き戸を閉めた。
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「あの、……こちらは」 瞳子ちゃんは、控えめに祐麒に視線を送った。 「あ、弟の祐麒です。花寺高校の二年」 祐麒は姿勢を正して答えた。 「ようこそ。私、リリアン女学園高等部の一年に在籍しております、松平瞳子と申します。…祐巳さまには、いつもやさしくご指導いただいております」
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「………姉がお世話かけます」 「いえ………」 嬉々として瞳子ちゃんの縦ロールとじゃれている姉に代わり、祐麒は頭を下げた。
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柏木「…僕の出番、これだけかい?」 |
2004.05.22 |