カルガモ |
「ちょっと…待って下さい、祐巳さまっ」 ザッザッザッ…。 枯葉を踏むにぎやかな足音が2つ、校舎の間を縫うようにして通り過ぎていく。 「いいからいいから、どうせついでだし」 「もう、勝手に一人で納得しないでください!そういうことではなく…」
|
「えぇ?じゃあどういうこと」 「ですから…いいからとにかく足を止めてください」 「でも、急がないとお昼休み終わっちゃうし」 「どうして祐巳さまは、そうマイペースなんですかっ」 ザッザッザッ…。 前を行く上級生の気まぐれな進路を律儀になぞるように、あとを付いていく下級生。 この図はあれだ、そう…
|
「まるで、カルガモの親子みたいだわね」 今まさに考えていた言葉が頭上から降ってきて、真美は思わずしゃがんでいた茂みから顔を上げた。 築山三奈子さまと目が合う。 …いやだなぁ。 「最近、似てきてるとか言われるんですよね…」 「?何が」 「いえ、別に…」 不思議そうな顔のお姉さまから視線を逸らす。
|
「まあ、あの場合、親ガモに自覚が足りないのが問題かしらね」 にぎやかな足音の去っていった方角を眺めて、三奈子さまはややあきれたように呟いた。 「はあ…」 気のない返事をする妹をまじまじと見やる。 「あなたもね、時々は後ろにくっついてきてる子ガモがいないか、注意しなさいな」 ポニーテールを揺らしてお姉さまが立ち去った後で、真美は首をかしげる。 今のは、一体どういう意味だったんだろうか、と。
|
三奈子「これでも結構、孫を楽しみにしてるのよ?」 |
2004.12.30 |