桜吹雪がやんだら |
染井吉野の薄紅色の花びらは、遠目には白く見える。
だから春の風がいたずらに巻き起こす桜吹雪は、さながら本物の雪が舞っているかのように目に映るのだろう。 すべてを包み隠してくれるのではないかと錯覚するほど、そこに存在していた花びらの分量は多かった。
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聖は花びらの作り出す白い世界の中に佇んでいた。 自分の姿すら見失ってしまうほどであれば、十メートル先にいる誰かに気がつくはずもない。
風は突然止んだ。 そして開けた視界の中で見つけた、自分でない誰か。
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「ぷっ…くっくっぁははははっ!」 二メートルと離れていない距離に、それぞれヘアバンドでむき出しのおでこと、鼻の下に花びらを張り付けた二人の少女が立っていた。 「…この忙しい時にいないから、心配して探しにきてみれば」 おでこに幾枚もの花びらを張り付かせた少女は、眉をぴくぴくと痙攣させた。
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「どうしますこと、紅薔薇さま?」 「…シメましょう」 紅薔薇さまと呼ばれた少女が鼻息荒く言った瞬間、鼻の下に張り付いた花びらが、勢い良く舞った。 「あーははははははっ!やめてよ蓉子、笑い死ぬーっ」 その様が面白かったのか、聖さらに爆笑。 ガツンと紅薔薇ぱんちをもらいました。
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ちなみに、新入生歓迎会が始まる寸前(笑)。 |
2005.1.28 |